「ちゃんと頭使って考えてるのか?」
「考えが浅い!もっと考えてこい!」
これらの呪文に悩まされた人はきっと少なくないでしょう。
自分だって試行錯誤して考えてきたのになぜそんなことを言うのか・・・と思ってしまいますよね。
私自身、新人のころは何度もこの呪文によって混乱状態に陥り、
「こんなに上手くいかないのは上司の指示がわかりづらいからだ!」
とネガティブな感情ばかりが膨れ上がったものです。
自分の頭で考える人と、考えていないと思われてしまう人、両者の違いは一体何なのか。
今回は「考える」という行為の正体と、自分の頭で考える習慣をつける方法についてご紹介します。
目次
自分の頭で考えるとはどういうことか
私が仕事で失敗を重ねる過程で理解したことがあります。
それは、
『感じる』や『悩む』という行為を考える行為だと勘違いしていた
ということです。
ただ感じているだけだったり、悩んでいるだけでは、考える行為には至っていないのです。
人は五感から得た情報を感覚として受け取り、その感覚は、頭の中でぼんやりとした感想になります。このぼんやりとした感想を持つところまでが「感じる」という行為です。ここまでは、眠っていない限り誰でも無意識に行なっています。
一方で、「考える」という行為は、五感から受け取った感覚を意識して言語化し分析することを指します。この分析するという行為は、自分が意識しない限り絶対に起こりません。
ここで一つ質問をします。
「スーパーマリオはなぜ面白いのでしょうか。」
ポケモンでもモンストでも荒野行動でもいいです。
ゲームを遊んだことがない方はアニメや映画など別のエンタメ作品で構いません。
「面白かった」という感想に対して、具体的な理由が言葉になって浮かんできましたか?
感じる状態で止まってしまっている人は、瞬間的な感想を抱くだけで、実は頭の中には何も残っていないことが殆どです。
「なんでそう思ったの?」と聞かれた瞬間にとっさに言葉が出るかで、日ごろから考えているかどうかがわかります。
スーパーマリオが面白いと思った理由、出てきましたか??
『無意識に頭に浮かんだ感覚や感情を意識して言語化し、その感情が頭に浮かんだ理由を自分なりに分析する』
これが、「自分の頭で考える」という行為の正体です。
ちなみに、冒頭の「自分の頭で考えろ」という呪文に対しては、「なぜ自分の頭で考えろと言われたのか」を自分の頭で考えることが改善への近道だったのですが、以前の私はうまくかないことを上司のせいにして、うまくいかなかった原因を考えることを怠っていました。
これが、自分の頭で考えていないと思われてしまった原因です。
自分の頭で考えるという行為は、気づいていないだけで、絶対に誰でもできる単純で簡単なことなのです。
難しく聞こえがちですが、本当に誰でもできます。
自分で考える力を鍛える最初の一歩は、人間は思った以上に感じている生き物で、想像以上に考えていないものだと気づくことです。
考えている人と考えていない人の違いは、これに気づいているか気づいていないかだけです。
「なんでそう感じたのだろう?」と意識して言葉に置き換えてみるだけで、今感じていることのすべては考えていることになります。
なので今、自分の頭で考えられないと悩んでいる人は、まったく心配する必要はありません。
知識量にこそ差はあれど、人間の脳はみな賢くできているので、日ごろから「なぜ?」を意識するだけで、だれでもすぐに「自分の頭で考える」ことができます。
なぜ、自分の頭で考えることが求められるのか
今はネットが普及し、誰でも手軽に知識を入手できる時代。
誰でも知っていることを仕事に反映するのは当たり前の時代になりました。
だからこそ、仕事やモノには『オリジナリティ』が求められます。
その人にしかできない創意工夫、その商品にしかない機能、その動画にしかない面白さ、などなど、他にないオリジナリティが需要を持ち、人を集めます。
Youtubeなどの動画や、ゲームアプリがわかりやすいですが、他に替えがきくようなコンテンツには人は集まりません。
もちろん、ものづくり以外の仕事にもオリジナリティが求められます。
仕事をいかに効率よく進めるか、ということが重視されてきているからです。
仕事を効率よく進めるためには、どうしたら効率よく進むかを「自分なりに考えて動く」ことが不可欠です。
これも立派なオリジナリティといえるでしょう。
効率化の過程で、機械やAIができる仕事はどんどん人間の手を離れています。
オリジナリティは、人それぞれの思考から生まれます。
そして、そのオリジナリティの質を高めるのは、思考過程における「自分なりの方程式」の量です。
自分なりの方程式が多ければ多いほど、いざ「どうしたら?」と考えたときに出てくる答えの質が高まります。
自分なりの方程式とは、「なぜ?」という疑問を解決するために自分が物事を考えた道筋のことです。
これは教科書やネットを見て得た知識とは性質が異なります。
自分なりの方程式を増やす近道は、日ごろから何気ない物事の「なぜ?」を考える習慣をつくることです。
これが、自分の頭で考える力を鍛え、自分のアウトプットの質を高める最短ルートです。
「なぜ?」を考える習慣作りには『広告観察』がベスト
では、どうしたら「なぜ?」を考えることを習慣づけられるでしょうか。
私がオススメしたいのは、『広告』を使ってなぜを考えるトレーニングです。
広告を題材にする理由は2つ。
理由その①:誰でも日常的に目にするものだから
歩いているとき、電車やバスに乗っているとき、ネットサーフィンしているとき、どんなときでも必ず一つは目や耳に入っているはずです。
↓こんな感じで!
↑広告おわり↑
習慣をつくるためには、新しいことをはじめるより、今やっていることの延長で考えるほうが確実です。
やらなきゃ、という義務感はモチベーションを最も低下させるので、意識しなくとも手軽に毎日続けられるものがベストです。
理由その②:最も手軽に触れられる創意工夫が凝らされたコンテンツだから
どこにいても見聞きできるということは、世の中はそれだけたくさんの広告に溢れているということ。
そんな無数の広告の中で、人々により強い印象を与えるため、代理店はさまざまな試行錯誤の上で広告を制作しています。
創意工夫が凝らされた制作物は、「なぜ?」を考えるには最適なコンテンツです。
制作物には、制作者たちの「なぜ?」の結果が大量に詰まっているからです。
広告の「なぜ?」を考える3つのポイント
「なぜ?」を持つポイントに特に正解はないので、自分なりにいろいろな視点で「なぜ?」を考えてもらうのがベストです。
ですが、最初はそもそも何を考えたらいいのかわからない方も多いはず。
そういう方はまず、
『広告を見て真っ先に目についたもの』
『その広告が掲示されている場所』
『その広告が掲示されている時期』
になぜ?を問いかけていってみましょう。
いくつか私の思考を例に挙げてみます。
例①:脱毛サロンの広告
電車内でよく見る脱毛サロンの広告です。
この広告、パッと見たとき何が真っ先に目についたでしょうか。
私の場合は『脱毛学割』という文言が真っ先に目につきました。
そこで、脱毛学割という文言が真っ先に目についた理由を考えてみます。
- 赤い文字だから
- フォントサイズが大きいから
- 背景が緑だから文字の赤がより目立ってみえる
大体こんな感じです。
このとき、制作者の意図と合致している必要はありません。
自分で考え、自分なりの理由をできるだけ細かい粒度で導き出すことが大事です。
次はそのキャッチフレーズの意味を考えてみます。
なぜ『脱毛学割』なのか。
- 学割という単語に敏感に反応するのは学生
- つまりこの広告のメインターゲットは学生
広告の掲載場所は電車なので、通勤通学中の学生がターゲットでしょう。
そして広告の掲載時期。
この広告を見かけるようになったのは4月上旬からです。
なぜこの時期に出したのか。
- 新年度は何かを始めたくなる
- 人が肌を出すのは夏で、4月は夏の3か月前
- 脱毛にはそれなりの時間がかかるので夏から通っていたのでは間に合わない
つまり、脱毛サロンの書き入れ時は夏前の春
こんな感じです。
このように直観から得た情報をどんどん掘り下げていきます。
これくらいの流れなら慣れていなくても3分くらいでできます。
ここまででも結構いろいろなインプットがありました。
一度整理してみます。
- 赤い文字は目立つ
- 大きい文字は目立つ
- 緑は赤を引き立たせる
- 脱毛サロンのメインターゲットは学生
- 新年度にあわせてキャンペーンを実施している
- 春は脱毛サロンの書き入れ時
これらが、脱毛サロンの広告を見た瞬間に私が考えて得た知識です。
この流れでどれくらい情報を抽出できるかは知識量に左右されますが、
まずは一つでも自分で考えたことが言語化できていればOKです。
こうして得た情報たちは、
教科書や本を見て頭に入ってくる情報と比べて強く頭に残ります。
なぜなら、思考過程が自分の方程式として頭に記憶されるからです。
この積み重ねが、次の「なぜ?」を生む土壌を作ります。
「こんな簡単で単純なこと!?」
と思った方もいるかもしれませんが、広告を見た瞬間に感想を言葉にできていなければ、これらのインプットは次の瞬間にはもう忘れてしまっています。
「なぜ?」を考えることを習慣づけるためには、この簡単で当たり前のことを意識して繰り返すことが肝心です。
例②:みすず学苑の広告
怒涛の合格!みすず学苑!
電車内で異様な存在感を感じたとき、大体そこにあります。
この広告は見つけるとついついどんなキャラがいるのか見てしまいます。
先ほどの脱毛サロンは直球ストレートな広告でしたが、みすず学苑の広告は変化球ですので、また違った知識を得ることができます。
早速感想を掘り下げてみす。
私がこの広告を見て真っ先に目についたのは奇抜なキャラクターたちです。
なんだなんだ?とよく見てみると、小さく名前が書かれていて、『ヤマトタケル』から『シンデレラ』『かぐや姫』ときて『火星人』に『金星人』まで。
これは関連性が全く意味不明です。
そしてキャッチフレーズからは、どうやら英語指導が得意な個人塾だということがわかりますが、英語塾らしい説明は広告下部に最低限書かれているだけ。
では早速、第一印象から得た感想を言葉にしてみます。
ちなみに広告の掲載場所は電車、掲載時期はおおむね受験シーズン後~夏までです。
- 奇抜すぎる
- みすず学苑は英語指導が得意な個人塾らしい
- キャラと塾の関連性が意味不明
- 掲載時期から、学習塾の書き入れ時は新年度~夏まで
- うさんくささMAX
いやー、この広告は考えてみても全く意味がわからない。
というわけで次は、『全く意味がわからない広告にしている理由はなぜか』を掘り下げてみます。
みなさんはどう考えたでしょうか。
私の中では、『意味不明な広告だからこそ目についてしまう』という仮説が立ちました。
この広告のすごいところは、確実に人目につき、何の広告かを確かめさせてしまうことです。中毒性もあります。
広告は、適切なターゲットに適切な情報を与えることも大事ですが、まず人目につくことが最も重要です。
広告はたくさんあるのに、みすず学苑の広告があるとつい見てしまう。
そして、「なんだこれ、みすず学苑?」と覚えてもらう。
この時点で広告としての最初のステップは達成しています。
新たに得た学びを整理します。
- みすず学苑の広告は意味不明すぎて注目してしまう
- 広告は目につくことが最も大事
さて・・・ここでもう一つ疑問が出てきました。
それは、『この広告に訴求力はあるのか』。
みなさんはみすず学苑の広告を見て、「この塾に行きたい」もしくは「こどもをこの塾に通わせたい」と思ったでしょうか。
私はこの広告を見て、うさんくさい塾だな…と思いました。
その理由は、学習塾という一般的には真面目さが求められる企業が、意味不明なキャラをウリにしているために安っぽくうさんくさいイメージを与えてしまっているからです。
このレイアウトといいヤマトタケルの笑顔といい、とてつもなくうさんくさい。
コスプレも安っぽさ全開で、予算があまりかかっていないのが何となくわかります。
一般的な顧客が求めるものと、企業側が推すものが乖離していますよね。
良い広告は、知ってもらった後に顧客獲得につなげていくもの。
しかし、このみすず学苑の広告は一般的な塾に通いたい層がまず逃げます。
そうなると、次に浮かんでくるのは、「そもそも生徒の数自体かなり少ないのでは・・・?」という疑問。
そうして広告の情報を見返したときに目につく合格率。
90%超えとかなり高いですが、他の大手予備校と比べて母数が違うなら、単純に合格率では比べられないことがわかります。
ただ、裏を返せば、「少人数でしっかり教育をしてもらえる合格率の高い個人塾である」かもしれないということもわかります。
あの広告を見て集まってくる人たちですから、塾生やその親御さんには変わり者や物好きが多そうだとも思いますね。
新たに出た情報をまた整理します。
- みすず学苑の広告は一般的な顧客にうさんくささを感じさせる
- ただし、その分少人数でしっかり教育してもらえる塾であるかもしれない
- この広告を見てみすず学苑に入塾する塾生や親御さんには変わり者が多そう
こんなところでしょうか。
では、すべての情報をまとめます。
- 奇抜で意味不明な広告だからこそつい目についてしまう
- 広告は目につくことが最も大事
- 広告は一度目についてしまえば、最低限の説明しかなくとも概要を理解できる
- 学習塾は新年度~夏にかけてが書き入れ時
- みすず学苑の広告は一般的な顧客にうさんくささを感じさせる
- ただし、その分少人数でしっかり教育してもらえる塾であるかもしれない
- この広告を見てみすず学苑に入塾する塾生や親御さんには変わり者が多そう
あの一見意味不明な広告からも、意識一つ、考え方一つでさまざまな学びを得ることができます。
今回は『広告はまず目につくことが大事』という学びだけでも自分の思考の結果でたどり着けていれば十分でしょう。
「なぜ?」を考え続けることが次の「なぜ?」を生み出す
人が疑問を持つときは、自分が持っている知識や経験と、見聞きしたものとの間にギャップを感じたときです。
つまり、物事に対して自分なりの考えを多く持っている人ほど、日常のあらゆる場面で違和感を感じる瞬間が多くなります。
そして、日ごろから「なぜ?」を考える習慣がついていると、違和感を感じたすべての瞬間に新たな学びが生まれます。
同じ場所を同じ時間歩いている人でも、インプットしている知識量は大きく異なります。
同じ時間過ごしているのに、それだけで損しているなんてもったいないですよね。
では、どうすれば自分なりの考え方を増やすことができるのか。
先ほどの反復になりますが、一番の近道は、日ごろから何気ない物事の「なぜ?」を考える習慣をつくることです。
今回の『広告』は、誰でも毎日目にするもの手軽な題材として例に挙げましたが、ゲームや映画、アニメ、スポーツなど趣味からも非常にたくさんの考え方を抽出できます。
物事から考え方を抽出することを繰り返すと、それが自分の方程式となって、「なぜ?」を考える土壌が育っていきます。
その土壌からまた新しい「なぜ?」が生まれるため、思考の循環がどんどん良くなります。
これが新しいオリジナリティを生み出す原動力になります。
早いうちからこのことに気づいていると、同じ一か月、同じ一年を過ごしても成長の度合いに雲泥の差が付きます。
仕事でうまくいかないとき、「どうしてうまくいかないのか」という思考を人は無意識にスキップしがちです。
しかし、日ごろから自分の頭の中の無意識に目を向け、「なぜ?」を考え続けることで、壁にぶつかったときも解決策を自分で考えていくことができます。
「自分で考えることができない」と悩んでいる方は、是非、広告観察から「なぜ?」を考える方法を試してみてください。
小さな積み重ねは絶対に功を奏しますよ!
ついつい注目してしまった広告で、一番最初に目についたものは何だったでしょうか?
是非掘り下げていってみてくださいね!
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余談
みすず学苑の広告については公式HPで解説されていました。
答え合わせしたい方は是非どうぞ!
↓の3冊は、私が『自分の頭で考えられない』ことに本気で悩んでいた時に読み込んでいた本です。
世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく
「思考軸」をつくれ ― あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由
ゼロ秒思考で紹介されている『メモ術』は、無意識に感じていることを言葉に置き換える習慣づくりに役立ちますし、思考軸をつくれでは、『自分なりの思考軸』をつくるためのインプット法を学ぶことができます。
はやくインプットしなきゃと焦る気持ちもあると思いますが、思考力、つまり脳のフィルターを鍛えていると、同じ時間を使っても抜群に質の高いインプットができるようになります。
まずは土台を鍛えて、その後のインプット・アウトプットの効率アップにつなげていきましょう!