仕事で信頼を失う原因は色々ありますが、ディレクターが最も信頼を失いやすいのはゴールを示せない、または、目的を意識できない人だと思われてしまったときです。
ものづくりにおいて最も重要なことは、ゴールや目的を明確にすること。『何のために』が決まらなければ、良いものはつくれません。
ゲームディレクターの仕事はゴールを示すことなので、ゴールを示せなかったり、目的を意識できないディレクターは現場スタッフから不信感を抱かれてしまいます。
目的がない状態で開発をはじめると、面白さに一貫性がない上に、ちゃぶ台返しが多くなり、ただただ時間とお金を無駄遣いすることになります。
というわけで今回は、一発で仕事ができない認定をされてしまうディレクターの特徴を3つまとめたいと思います。一つでも当てはまってしまったらヤバいかも・・・!?
ディレクターの方には振り返り用のチェックリストとして、ディレクターを目指す方には絶対にやってはいけない3項目として今後の参考に、ディレクター以外の職種の方には地雷チェッカーとして、それぞれ使っていただければと思います!
ゴールを示せないゲームディレクターの3つの特徴
①コンセプトをゲームジャンルで答える
ゲームのコンセプトを尋ねられたときに、RPGやアクションなどのゲームジャンルで答えるディレクターがいますが、ゲームジャンルはコンセプトではありません。
アクションといっても色々あります。単語一つ聞いただけでは、頭に思い浮かぶイメージはみんなバラバラです。
例えば、モンスターハンターだったら、狩りをしながら武器防具を作り、より強いモンスターを狩りに行くハクスラ的な成長の流れが楽しい。デビルメイクライなら自分の操作でスタイリッシュにデビルハンターを動かし敵をフルボッコにすることが楽しい。バイオハザードならお化け屋敷的なスリルと謎解きが楽しい。ストリートファイターならコマンド入力で他人と駆け引きすることが楽しい。
この四つのアクションゲームを取ってみても、成長を楽しませるアクションゲーム、テクニカルな操作で無双を楽しませるアクションゲーム、スリルと謎解きを楽しませるアクションゲーム、他人との駆け引きを楽しませるゲームと、全部遊ばせ方はバラバラです。
そして、本当のコンセプトは、アクションゲームの手前についている『〇〇を楽しませる』の部分です。ゲームジャンルはゲーム内容をざっくりと連想できる便利な言葉ですが、それだけでは何を楽しませたいのかは伝わりません。
コンセプトを尋ねられてゲームジャンルで答えてしまうと、明確なビジョンを持てていない、面白さの軸を定められない、ゲームを一連のサイクルとしてイメージできていない、と思われてしまう可能性が高いです。あるいは、プレイヤーとしてのゲーム体験は持っているが、作り手としてゲームの面白さを分解しきれていないというパターンもあるかもしれません。
②実装項目やマイルストーンを作れない
※今回は、作れる状況にあるのに作らない、または作り方を知らないディレクターに限定して書きます。
実装項目とは、ゲーム開発におけるTo Doリストです。立ち上げ当初や試作段階ならいいですが、本開発に入っているのに実装項目がないプロジェクトはかなり危ないです。
実装項目がないということは、ゲームの全体像や、完成までの具体的な手段が明確になっていないということで、ディレクターが明確なビジョンを持っていないことの表れです。
また、実装項目がないプロジェクトには絶対にスケジュールもありません。やることが決まっていないのに、優先順位も工数もつけられるはずがないからです。実装項目がないのに、現場にはスケジュール感を求めるディレクターたまにいます。
パッケージタイトルはゴリおしで何とかなる場合もありますが、運用型のタイトルだった場合は本当に悲惨です。
運用型タイトルの場合、定期的にアップデートをしていきますが、アップデートはバージョン管理やスケジュール管理をしっかり行なう必要があるので、実装項目すら作れないディレクターでは確実にゲームとチームが爆散します。大規模アップデートを行なう場合、一年以上前から開発を進めることもあるので、半年~一年単位の中長期の開発計画も立てる必要があります。
以前、タスクやスケジュールの管理をプロマネの仕事だと断言して、一切かかわろうとしないディレクターに遭遇したことがありますが、このディレクターのプロジェクトで、リリース日以外の具体的なスケジュールが共有されることは一度もありませんでした。
開発の進捗が悪いと、スケジュールを切らないプロマネのせい、という感じでプロマネに全責任を転嫁するディレクターがいますが、何を作るかを決めるのはディレクターなので、本来であればタスクと進捗の管理はディレクターが行なうのが一番早いはずなのです。最近はゲームの規模感が大きくなっているので、ディレクション以外の仕事を分担して、ディレクターの負荷を減らせるようにしているだけです。
そんなわけで、スケジュール管理をプロマネに一任して一切関与しないディレクターも地雷率が高いと言えるかもしれません。
③目的を提示せずに手段を模索させる
目的が決まっていないのに手段の模索に時間をかけさせるのは、ものづくりのやり方として不健全です。ゴールがどこにあるかわからない状態で大勢の人を走らせているのと一緒です。
仕様は目的ありきで決まるので、目的が定まっていない状態で案を出せと言ったり、ダメ出しをするディレクターは、スタッフからするとただただ理不尽。
ちょっと例をあげてみます。
ある日の企画会議でのディレクターの一言。
「レベルアップ以外に面白い強化システムを実装したいから、強化システムの案ください」
ディレクターからのオーダーはこれだけだったとします。
強化システムといってもやり方はさまざま。一本道か、自由にカスタマイズできるか、最終的には同じ状態になるけど過程だけ分岐しているのか、見た目は複雑にするのか、シンプルにするのか、育成に必要なアイテムはどこで手に入れるのか、などなど。
目的次第でいかようにも変わります。
この状態で意見を集め始めると何が起きるかというと、方向性がバラバラの案が大量にあがってきます。その後は、何を軸に企画の良し悪しが判断されているのかわからなくなり、ディレクターが出口を見つけるまで案出しに関わったメンバー全員が迷宮をさまようことになります。
言われたとおりに案を持ち寄って企画会議を行なっても、大抵「なんか違う」「これはちょっと面白そう」など、あいまいで感覚的なフィードバックばかりで、ダメ出しされたほうも納得感がなくもやもやが残ります。
大体こういう流れのときは、ディレクターの感覚だけで決まるか、ディレクターが目的に気づくことで決着がつきます。後者の場合、ディレクターが目的を決めるまでに他のスタッフの工数を使っているわけです。案だしを依頼される側も気持ちのいいものではないですよね。前者の場合はつける薬もありません。
このような感じで、機能の目的や役割を具体化できていないのに「とりあえずやってみて」の一言で開発を進めようとするディレクターは現場を混乱させる上に他人の時間を無駄に使います。
あとからちゃぶ台返しが起きて仕様が変わったり、最悪作ったものがなくなってしまうこともあります。軸がない状態で作るので、ゲーム全体で見ると一貫性のない仕様になってしまっていることも多いです。
「とりあえずやってみて」は、目的がある状態で手段を模索する場合には有効ですが、目的を決める前に手段を模索すると軸がぶれぶれになるので絶対にやめましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか!
改めてになりますが、ゴールが明確であることや目的が意識できていることはものづくりにおいて最も重要です。
ディレクターが日ごろからしっかりゴールや目的を意識して仕事を行なうことで、現場全体で開発の目的を統一できるので、団結力がついていきます。
また、目的に沿った判断軸でフィードバックを返すことで個々の現場スタッフからも信頼が集まり、その積み重ねによってチームの開発力は高まっていきます。
チームの信頼関係はゲームのクオリティに如実に現れますので、ディレクターが目的を持っていることは、面白いゲームづくりの最低条件です。
今回1つでも当てはまってしまった方は、知らず知らずのうちにスタッフからヘイトを集めてしまっているかも・・・!!
目的意識は、普段から『なぜ?』を考える習慣をつけておくと、意識しなくても自然と考えられるようになります。私が新人の頃は目的設定や論理的思考にめちゃくちゃ苦戦しまして、思考法に関する本をかなり読み込みました。
誰かの書いたゲームデザイン論を読むより、根本的なものの考え方を知ることのほうが、確実にプランナー、ディレクターとしての成長につながります。
プランナーやディレクターの仕事は、目的に沿って手段を考えたり、問題の原因を見つけて解決策を考えるコンサル的な側面が強いので、物事の考え方を身に着けると面白いくらいレベルアップできます。
思考力を鍛えると、インプットとアウトプットの質もあきらかに変わるので、早めに思考力を高めることがおススメです。
参考までに、私が全力でおすすめする本当にためになる思考力アップ本3選。
世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく
「思考軸」をつくれ ― あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由
ゼロ秒思考で紹介されている『メモ術』は、無意識に感じていることを言葉に置き換える『考える習慣づくり』に役立ちますし、思考軸をつくれでは、『自分なりの思考軸をつくるためのインプット法』を学ぶことができます。
はやくインプットしなきゃと焦る気持ちもあると思いますが、思考力、つまり脳のフィルターを鍛えていると、同じ時間を使っても抜群に質の高いインプットができるようになります。
まずは土台を鍛えて、その後のインプット・アウトプットの効率アップにつなげていきましょう!
以下は私なりの『なぜ』の考え方をまとめた記事です。
というわけで、今回はここまで!